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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

そしてゴーリキイの物語は、どれもみんなその人々の悲しみと善意ともがきの物語りである。これらの人々が自分たちの人生を変革し、人間らしく生きようと決心して、忍耐づよくつづけた闘争の過程で、ゴーリキイはペテロパウロフスクの要塞にいれられたし、イタリーへ亡命もしなければならなかった。ゴーリキイの人生はそっくり、正直で骨身惜しまず、人間のよりよい生活のために尽力したすべてのロシアの人々の歴史だった。

伸子は、まだ冬だった頃、メトロポリタンのがらんとした室で中国の女博士のリンに会った帰り途、自分に向って感じた問いをゴーリキイ展からの帰り途ひときわ深く自分に向って感じた。伸子の主観ではいつも人生を大切に思って来たし、人々の運命について無関心でなかった。女として人として。だけれども、伸子は、誰とともに生き、誰のための作家なのだろう。伸子はどういう人達にとっていなくてはならない作家だと云えるだろう。

伸子は、アストージェンカの角を横切りながら再び肩をちぢめるような思いで、写真について生意気に云った自分を思いかえした。伸子が、ひとなら、あのひとことで佐々伸子を憎悪したと思う。