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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
そこは廃園だった。楡の枝かげの雑草のなかに、壊れた大理石の彫刻の台座の破片が二つ三つころがっていて、茂みのむこうは、河岸通りの見える鉄柵だった。そこにネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の流れが見えていた。濃い夏草と楡の下枝のむこうの鉄柵ごしに見えるネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の流れは、伸子がほかのどこで見たよりも迅く、つよく流れているようだった。その水音が聴えて来るかと思うほどひっそりとした真昼の小砂利道は、ドアの片びらきになっている一つの戸口へ伸子たちを導いた。奥の方へつづいた大きい建物のはずれにあいているそのドアは、事務所めいたところがどこにもなくて、外壁に改めてかけられているレーニングラード‐ヴ・オ・ク・スの札がなければ、あたりの人気なさは伸子たちに自分たちを侵入者のように感じさせそうだった。
伸子たちは、タイプライターの音をたよりに二階の一つの広間へ入って行った。そこは、壁に絹をはった本式の貴族の広間だった。楕円形の大テーブルが中央に置いてあって、その上にきちんと、ヴ・オ・ク・スの出版物が陳列されている。そこを通りぬけた小部屋でタイプライターがうたれている。