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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

その頃は、どこへ行ったって武装した兵士ばかりでした。――ただその連中の旗がちがいました。赤い旗を彼等はもっています。ツァーはもういない。革命だ、と彼等は云います。しかし、私どもは何にも知っていない……」

パーヴェル・パヴロヴィッチはそのときの困惑がよみがえった表情で、たれさがっている両頬をふるわせた。

「われわれの受けていた命令は国境警備に関するものでした。われわれは革命軍に対する命令は何も受けとっていなかったんです」

きいている一同の口元が思わずゆるんだ。

「それで、どうなさいました? パーヴェル・パヴロヴィッチ」

リザ・フョードロヴナが訊いた。

「御免下さい奥さん。――わたくしに何ができましょう。私には理解できませんでした。革命軍は将校をみんなひとつところに集めました。そして、その一人一人について、集っている兵士たちにききただしました。上官として彼等を苦しめるようなことをしたかどうか。将校は一人一人、連れ去られました。――おわかりでしょう? わたくしの番が来ました。わたくしはもう死ぬものと思って跪きました。私も将校ですから。ほかの将校たちよりよくもなければわるくもない将校であると思っていましたから。