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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「あなたがた、どうお思いです? あんまり我儘でしょうか」

伸子も素子も、吉之助の気持がぴったりわかるだけに、すぐ返事をしかねた。

「――わたしは妻を求めているんですね。演劇そのものの話し合える……」

するとわきできいている伸子をびっくりさせるような鋭さで、素子が、

「かりにそういうひとが細君になったって、やっぱりマネージャ的必要は起って来るんじゃありませんか」

と云った。

「ほんとに、わけられるもんなのかな――あなたに、わけられますか?」

「わけられないことはないと思いますね。ほんとに芝居のことがわかっているひとっていうなら、自然自分でも舞台に立つひとだろうし、舞台に立つものなら勉強の面とマネージャ的用事と、却ってはっきり区別がつくわけですから……」

赤いパイプを口の中でころがしながら、じっと吉之助の言葉をきいていた素子は、ややしばらくして、

「なるほどねえ」

深く自分に向って会得したところがあったようにつぶやいた。

「あなたは、リアリストですね」

その云いかたに閃いたニュアンスが伸子に素子の気持の変化を感じとらせた。伸子が理解したと同じ明瞭さで、素子も、長原吉之助が求めている女性は、彼として現実のはっきりした条件をもって考えられて居り、少くとも伸子や素子たちとそのことについて話す吉之助の感情に遊びのないことを理解し