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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
このトゥウェルスカヤ通りがはじまってほんの五つか六つブロックを進んだ左側の歩道に向って、ガランとして薄暗い大きい飾窓があった。その薄く埃のたまったようなショウ・ウィンドウの中には、商品らしいものは何一つなくて、人間の内臓模型と猫の内臓模型とがおいてあった。模型は着色の蝋細工でありふれた医学用のものだった。ショウ・ウィンドウの上には、中央出版所と看板が出ていた。しかし、そこはいつ伸子が通ってみても、同じように薄暗くて、埃っぽくて、閉っていて、人気がなかった。この建物の同じ側のむこう角では、中央郵便局の大建築が行われていた。その間にある横丁を左へ曲った第一の狭い戸口が、伸子たちのいるホテル・パッサージだった。
オフィス・ビルディングのようなその入口のドアに、そこがホテルである証拠には毎日献立が貼り出されていた。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)は紙払底がひどくて、伸子たちはついてすぐいろんな色の紙が思いがけない用途につかわれているのを発見したが、その献立は黄色い大判の紙に、うすい紫インクのコンニャク版ですられていた。伸子がトゥウェルスカヤ通りからぐるりと歩いて来てみると、陰気な医料器械店のようなショウ・ウィンドウをもった中央出版所も、パッサージ・ホテルも、その一画を占めている四階建の大きい四角な建物