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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「こちらが妹さん、さくらさんていうんだそうです。――姉妹で度々楽屋へ訪ねて頂いたんですが……」
妹も新しくないベージュの絹服をきていて、器量は美しいけれども艷のない若い顔に白粉がついていた。胸のひろくあいた古い絹服、睫毛の長い黒い眼にある一種のつやっぽさ。伸子と素子には、娘たちのなりわいが推察された。同じさくらという日本名をもっていても、この娘たちにくらべると光子とその友達のさくらは、まるで別の雰囲気の若い娘たちだった。
一つ長椅子の上に並んでかけた姉妹は伸子たちと、ぽつりぽつりあたりさわりのない話をはじめた。二人ともほんとに内気らしく、二人ともどこにも勤めていない、と答えたりするとき、そんな質問をしたのが気の毒に思えるような調子だった。素子が間に日本語で、
「あなた、このひとたちの家へ行ったことがあるんですか」
と吉之助にきいた。
「ええ、一二度」
そして、
「ひどいところに住んでいるんです。何人も一つ部屋にいて、カーテンで区切って。あんまり気の毒だったから少しおくりものして来ました」
と云った。娘たちの住居はモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)河のむこう岸らしかった。