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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
――あなたの旦那様とお話ししましょう。そして、わたしどもに話がわかることだったら、そのとき荷もつは動かしましょう。――この部屋がいるのは何時ごろからです?」
「多分夜だろうとは思うんですが……」
細君は、途方にくれたように両手をねじりつづけ、顔のむらむらが一層濃くなった。そのまましばらく立っていたが、急に啜り泣きのような音をたてて息を吸いこむと、ドアをあけはなしたまま部屋を出て行った。
立ってドアをしめながら、伸子が目を大きくして、
「何のことなの?」
小声で素子にきいた。
「何がもちあがったっていうんだろう」
素子は不機嫌に唇のはしをひきさげて、タバコに火をつけながら、自分にも分らない事件の意味をさぐりでもするようにドアをしめて来た伸子をじろじろ見た。
「何がどうさけがたいのか知らないが、バカにしてるじゃないか、いきなりここをあけろなんて。――そんなくらいなら貸さなけりゃいいんだ」
「ほかの部屋をつかえばいいんだわ。なぜわたしたちが子供部屋へ行って、ここをあけなけりゃならないのかわからない」
いいことを思いついたという表情で伸子が、
「いいことがある!」
と云った。