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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
学ばれること。模倣されること。ソヴェト独特の絵や文学がそのどっちでもなかったということは、伸子にとって身につまされる実感だった。この発見のなかには、伸子にむかって、それならお前のものはどこに? とひびく声がひそんでいた。ソヴェトの芸術はソヴェト生活そのものの中から。自分としては今のところ、益々ソヴェト生活そのものの中へ、という執拗な欲求の形でしか伸子の答えはないのだった。
そういうわけで、この冬、伸子はもっぱらトレチャコフスキーやモローゾフスキーを見るにしても――
「どうして、そのノヴォデビーチェ、ことわっちゃいけないの?」
それは自然な伸子としての疑問だった。
「そんなこと今更できやしないよ。だって、あの連中」
と素子はクワルティーラの番号だけはっきり覚えていて、名を忘れた化学航空組合員夫婦のことを云った。
「わたしがはじめての借りてなんだもの。そのためにデスクとディヴァンを買って入れたんだし、こっちだってそれに対して前払いしたんだから、解約なんてばかばかしいことはできないよ」
解約すれば一ヵ月の前金は先方にわたすことになっているのだった。
アストージェンカからノヴォデビーチェ行きの電車にのりながら、伸子は、そういう素子らしい考えかたを滑稽なように、また、いやなように感じた。