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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「どうだった?」
ときいた。これは、そとは一般にどうだった、という意味だった。その素子の声には、たっぷり三時間一人でいたあげくの変化をよろこぶ調子がある。伸子は喋り出す。素子も新しいタバコに火をつけた。
「でもね、こういうこまごました面白さって、生活の虹だもの――話したときはもう半分消えてしまっているわ」
伸子は、遺憾そうに云った。
「ほんとに一緒に出られるといいのに。――」
デスクの上にひろげられている本から、わきにおいてある腕時計へちらりと目をやりながら、素子は、
「なにしろ、毎日の新聞をよむのがひと仕事なうちは、仕様がないさ」
あきらめたように云うのだった。新聞――伸子はうけて来た許りの様々の印象で瑞々しく輝いていた眼の中に微かな硬さを浮べた。
毎朝起きると、ドアの下から新聞がすべり込んでいるようになったとき、伸子は、自分によめない字でぎっしり詰まっている「プラウダ」の大きい紙面を、あっちへかえし、こっちへかえしして眺めた。そして、素子に、
「あなたが読んでいるとき、ところどころでいいから、わたしにも話してきかしてくれない?」
とたのんだ。そのとき「イズヴェスチヤ」