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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
そういう性質の仕事にまったくふさわしくなく愚直で、悪意がないどころか機智にさえかけた女助医のしどろもどろの努力はむしろ伸子にあわれを感じさせた。伸子は、もう一年以上モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)に生活して、ある程度は外国人に対するソヴェトとしてやむをえない必要というものについては理解していた。そして、伸子の理解は同情的だった。無邪気でない者に対して無邪気である必要はない。自分の気持としてもそう思っているのだった。だからそういう特殊であるがその特殊が一般性となっているところではあるとき自分もそれにかかわってゆくのはさけられなかった。伸子の主観的な気持から言えば、いまこの女助医は率直に、これこれのことについて答えて下さい、と伸子に向っていうのが一番かしこい的確なやりかただった。しかし彼女にそうはできない。なぜなら彼女の女助医という立場と別の任務とは全く別個の任務とされていてそれについて知っているものは彼女自身よりほかにあってはならないのが任務の性質だから。
伸子は、彼女のためと自分自身のために、きわめてざっくばらんに説明した。
「或る程度文学の上での仕事を認められている作家が、出版社から本を出す約束で金を出させて旅行するということは、どこの国でもあることです。