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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

それまでに、伸子と素子はパリに到着していればいいはずだった。一年半もそこに暮していれば、伸子と素子とにとって外国であるモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の生活はいつしか身に添ったものになっていて、ポーランド国境を越して来て、伸子も素子も新しく外国旅行に出発して来ている自分たちを感じているのだった。

長い旅行に出たての気軽さと不馴れなのんきさとで、伸子たちは一晩をそこにとどまるワルシャワで格別ホテルを選択もしていなかった。馬車が案内するままに停車場近くの、国境通過の客ばかりが対手のようなそのホテルに部屋をとった。

ワルシャワの駅頭でうけた感じ。それからその三流ホテルのロビーや食堂で、あぶらじみたような華美なような雰囲気にふれるにつれ、伸子と素子とは自分たちがここでは外国人であり、どこまでも通りすがりの外国人としての扱いで扱われることをはっきりと感じた。その国の人々の間で自分たちをそれほど外国人として感じることは、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ではないことだった。それに、ワルシャワでは特別、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)から来た外国人というものに、一種の微妙な感情がもたれているらしかった。