轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
なるほど暫くすると、伸子たちの馬車は、その馬車のいかにも駅前の客待ちらしいうすぎたなさが周囲から目立つように堂々とした住宅街にのり入れた。近代的な公園住宅で、一つ一つの邸宅が趣をこらして美しい常緑樹の木立と花園に包まれて建っていた。芝生の噴水のまわりで小さい子供が真白いエプロンをつけた乳母に守りされながら、大きい犬と遊んでいる庭園も見えた。この界隈では、富んでいるのが人間として普通であるようであり、どの家もそれを当然としてかくそうとしていなかった。旧市街の人々が、せま苦しい往来いっぱいに貧を氾濫させて、かくそうにもかくしきれずにいたとは反対に。
その住宅街を貫いて滑らかな車道と春の芽にかすみ立った並木道が、なだらかに遙か見わたせた。自分たちが決してこれらの近代的館の客となることはないのだと感じながら、伸子は贅沢に静まっている邸宅の前を次々と馬車で通りすぎて行った。伸子は、ふと、こういう邸宅のもち主にユダヤの人は一人もいないのかしら、とあやしんだ。いるにきまっていた。たとえば、ここのどの屋敷の一つかがロスチャイルド一門に属すものであったとしたら、近所の召使いたちは何と噂するだろう。