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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
津山進治郎の説明によると、それらの奇妙なものは、ことごとく囚人の胃の中からとり出されたものだった。未決監獄へいれられた囚人たちは、屡々自殺しようとしたり、病気を理由に裁判をひっぱろうとして、異物をのみこむ。その計画をこのレントゲン室はすぐ見破って、彼らは適当な処置をうける、というのだった。
日本人の医学者たちは、未決囚の胃の中からとり出された異様な品々に研究心をそそられるのか、その室の内に散ってめいめいの顔をさしよせ、ガラスの内をのぞき、そこに貼られているレントゲン写真の標本を眺めた。標本写真の中には、靴の踵皮をのんでいる、二十二歳の男の写真というのもあった。自分の毛をむしってたべて、胃の中に毛玉をもっている男の写真もあった。伸子はある程度まで見ると、胸がわるいようになって来て、自分だけこっそりドアの方へしりぞいた。どういうずるい考えがあったにしろ、人間が自分の口からあんなに堅くて大きいスプーンをへし曲げてのみこんだり、靴の踵皮をのみ下したりする心理は普通でない。それほど、彼らを圧迫し、気ちがいじみたことをさせる恐怖があるのだ。監獄にレントゲン室が完備しているのを誇る、そのことのうちに、伸子は追究の手をゆるめない残酷さを感じた。