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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

同じもの――そう――でも、何と別なものだろう。伸子は、えづくように、バシャバシャいっていたあの音を思い浮べた。

「ほかに御馳走はありませんが、この皿はどうかおかわりをなすって下さるように、ということです。なお、いまここに出ているものは、みんな囚人たちのたべるものばかりだそうです」

真白い糊のきいたクローズをかけたテーブルの上には、各人にパンの厚いきれとバターがおかれているほか、皿にのせられたチーズの大きい黄色いかたまり。四角いのと円い太いのとふた色のソーセージを切ってならべた大皿。ガラスの壺にはいった蜂蜜。菓子のようにやいたもの、干果物などがならべられている。これはみんな囚人たちのたべるもの――でも、それは、いつ、どれを、どれだけの分量で、彼ら一人一人に与えられるというのだろう。客たちが説明され、そしてたべるのをじっと目をはなさず見守っている雑役たちの瞳のなかに、伸子は、彼らが決してこういうものをいつもたべているのでない光を認めずにいられなかった。雑役たちは、じっと視線をこらして客のたべるのを見ている。全身の緊張は、いつの間にか彼らの口の中が、つばでなめらかになっていることを語っていた。