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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
伸子はこれまで素子と自分とが、一方はスーツずきで、一方はワンピースずきだというようなことについて、特別な注意を向けたことは一度もなかった。素子と自分とは皮膚の色がちがうように、体つきがちがうように、めいめいはめいめいのこのみで着ているとしか思ったことがなかった。こまかく云えば、伸子がそう思っていたということさえ、いくらか意識しすぎた表現になるくらいだった。ひとりでにそうなって来ていた。ところがつい二三日前、伸子たちはつづけざまに妙なものをみた。
十四
川瀬たちのグループが、伸子と素子をつれて行ったのは、ベルリンの繁華街から二つばかりの通りをそれた、とある淋しい町だった。リンデンの街路樹のしげみのかげに、ぼんやり青っぽい灯のついた一つのドアをあけて入った。内部は、こぢんまりしたカフェーだった。レコードが鳴っていて、幾組か踊っている。周囲の壁ぎわに、スタンドに照らされた小テーブルがおかれていて、そこへかけて、踊っている組を眺めているものもある。伸子たち四人は一つの小テーブルを囲んでかけたが、気がついてみると、その狭いカフェーで男というのは、川瀬や中館たちばかりだった。