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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
多計代が無理な旅行に出ているということが、何につけてもみんなの無理のかなめとなっている。伸子は、多計代がパリか、ロンドンで長く臥つくようなことにならなければ幸だ、とまじめに思った。泰造の経済力は、そこまでの負担にたえるとは思えない。
「お母さまの健康、よっぽどひどいのかしら」
だまってみんなの話をきいていた素子が、おこったように、
「見たってわかるじゃないか」
と云った。
「――お兄様、三井さんとお話しになったんじゃない?」
多計代の信頼している家庭医の名を云って、小枝が和一郎をかえりみた。
「三井さんは、はじめっから絶対反対さ。医者として保証しないって云ったんだ」
保が死んでから、多計代は見ちがえるように健康を失ったのだった。
「それでも、おっかさんがきかないもんだから、おやじも仕様がなくなったんだろう」
そうならば、伸子は考えるのだった。つや子や和一郎夫婦をごたごたとひきつれて来るよりも、実質的に多計代をたすける能力をもった、語学ができてしっかりした女のひとを一人つれて来るべきだった。そのひとと、泰造の助手となれる若い男のひととを。――どうせ、多計代を中心にしての計画ならば、どうしてみんなはそういう風に、整理された旅行の方法を考えつかなかったのかしら。