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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

国交断絶。支那側による東支鉄道の回収について、パリの英字新聞「デイリー・メイル」は冷静に事実を報道しているだけだった。「吾々の最も危険な敵はソヴェト・ロシアである。吾々は列強の特権を武力をもって廃絶しないであろう」そういう蒋介石の宣言をのせている。「リュマニテ」はこの事件の真実について語っていた。南京政府はソヴェト・ロシアに対する戦争政策によって、中国労働大衆の革命を弾圧するための帝国主義国の援助を獲得している。そして、国境にどしどし白露軍を結集させていると報じた。中国側がハルビンに戒厳令をしいたということは、そのニュースの本質を裏がきすると、伸子は思うのだった。

おととしの冬、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来る途中で、伸子と素子とは四五日ハルビンへよった。目抜きのキタイスカヤ通りの光景。そこにあった大百貨店チューリン。ハルビンにいる金まわりのいい日本人――というより、ハルビンにいる日本人が、金まわりのいいときや内地から客が来たとき、出かけてゆくレストランやキャヴァレーは、大抵、白系露人が経営しているところだった。こんどの蒋介石のやりかたに対して、ハルビンの日本人の大部分がどんな興味と期待をもっているかが、そこで会った幾人かの人の顔を一つ一つ思いうかべながら、伸子は想像できるようだった。