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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
釈放するのは危険であるが、しかし監禁を続けるのも、クスコへの進軍を開始するとすれば、非常に困難である。インカは頻りに釈放を要求したが、ピサロは身代金の残余を免除しただけで、拘禁の方は更に援軍が到着するまで継続することを宣言した。その内に土人蜂起の噂がまた燃え上って来た。その火元がどこであるかは解らないが、アタワルパを極度に憎んでいた通弁が余程怪しいと云われている。とにかくインカはその首謀者として疑をかけられ、再びピサロの訊問をうけた。インカは前と同じようにそういう企てのあり得べからざることを弁明したが、疑は解けなかった。新来のアルマグロやその部下たちはインカの死刑を主張し始めた。ピサロはそれに同意しないように見えた。エルナンド・デ・ソトその他少数のものもそうであった。ソトは噂の真否を確めるために小部隊を率いて偵察に派遣された。が隊内の輿論はますます高まり、遂にピサロをしてインカを裁判に附することに同意せしむるに至った。
インカの罪として告発されたのは十二カ条であったが、その内重大な箇条は、彼が王位を簒奪し兄を殺したこと、彼がスペイン人の征服以後に国家の収入を浪費し一族や寵愛のものに与えたこと、偶像を礼拝し多妻によって姦淫を犯したこと、及びスペイン人に対し謀叛を企てたことであった。