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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
武士が百姓町人となることも、百姓が商人に転ずることも、禁止せられた。これは封建的な身分制度の基礎工事である。
この武装解除や身分釘づけの処置は、勿論武力の威圧の下に強制的に行われたのであるが、その手段として用いられたのは他ならぬ民衆の自治組織そのものであった。長期に亘り民衆は団結によってその力を発揮して来たのであるが、今やその団結が民衆を弱める武器として用いられはじめた。というのは、秀吉は、刀狩、検地、転業の禁などを励行するに当って、違犯者に対する刑罰の連帯性を以て臨んだのである。一人でも違犯者を出せば、「一郷も二郷も悉くなで切り」が行われる。団結の範囲が広ければ広いほど、「なで切り」に逢う危険が多い。人々は出来るだけ団結を小さくして、相互の警戒の眼を届かせることにより、この危険を防がなくてはならぬ。かくて曽ては武士階級への反抗の手段であった民衆の団結が、武士階級への隷属の手段、武士の支配を強化する警察力に転化した。やがて一五九七年には、辻斬・掏摸・盗賊等の取締という純粋に警察的な目的を以て、侍は五人組、下人は十人組の組合を作り、組中の犯人は組合から告発せしめるという制度を作るに至った。