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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
のみならず彼は思考の力においても優れていた。だからトルレスは、日本人と立ち入った議論をしようと思うときには、もとの琵琶法師ロレンソを呼んで代弁せしめた。そのほかにトルレスは一人の少年(ベルシヨール)を育て上げた。この少年はポルトガル語を読むことが出来、しばしばキリストの一代記を日本人に読み聞かせるという役をつとめた。こうして一年程の間にトルレスは千五百人ほどの熱心なキリシタンを作っていたのである。大道寺建立の企てはこの盛り上る力の現われであった。
そこへ新らしく渡来したダルカセヴァやシルヴァが乗り込んで来たのであるが、この新来者の眼を驚かせたのは、山口のキリシタンの熱心さであった。ヨーロッパでは一般人がすべてキリシタンであるから、キリシタンであることと宗教的な熱情を持つこととは必ずしも一つではない。しかるにこの地のキリシタンは、特に宗教に身を捧げようとする修道者のように熱心であった。新来の教師たちに対して親切であることはヤソ会の兄弟(イルマン)以上である。人種の違うポルトガル人をもキリシタンたるが故に本当の兄弟のように思うとともに、同じ日本人でもキリシタンでないもののことを念頭に置かない。