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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
将軍義輝は神父を一人ずつ接見したが、フロイスはその際の義輝の印象については何も語らず、ただその室の美しかったことを言葉を極めて讃めている。自分はこれまで木造の家であれほど美しいのを見たことがない。室は金地に花鳥の美しい絵で取巻かれ、畳は実に精巧なもので、書院の窓の障子も非常に好かった、と彼は云っている。次の間に下ったとき、神父の着ているカパは珍らしい、見せて貰いたい、ということであった。次で将軍の夫人に謁する時には、間の襖を開いて、次の間から礼をした。義輝の母慶寿院尼も同じ構えのなかにいたので、二人はそこへ行って、大勢の婦人の侍坐している前で盃を頂戴した。フロイスはここでも、その静かで、簡素で、きちんとしている有様を、僧院のような感じだとほめている。この人たちが半年後に悲惨な目に逢ったのである。
この年賀の翌日にビレラは、当時の実権を握っていた「三好殿」を河内の飯盛に訪ねて行った。三好長慶は実は前年の夏、四十二歳で病死したのであるが、まだ喪を発してはいなかったのである。ビレラはそこから堺のダルメイダを呼んだ。
ダルメイダはフロイスと共に堺に着いた時直ぐ日比屋で寝込んだのであるが、その病中二十五日ほどの間は、父母の家にあってもこれほど親切にされることはなかろうと思われるほどの愛情を以て看護された。