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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
つまり彼はキリスト教排斥運動を顧慮していたのである。内裏から出た宣教師追放令はまだ取り消されてはいなかった。排斥派はそれを拠り所にした。フロイスが信長を訪問すると、すぐその夜には、内裏から将軍に対して宣教師追放を信長に命令せよという交渉があった、という噂がひろまった。翌々日の早朝には、内裏の使がフロイスのいる信者の家を壊しにくると注進する人があった。フロイスは早速ロレンソを和田、佐久間、高山などの許に使にやり、自分は他の信者の家に逃れて一日中潜伏していた。信長が宣教師に会わなかったということだけで、これだけの不安があったのである。
この不安は和田や佐久間の保証で取り除かれ、フロイスは初めの信者の家へ帰って復活祭の週のさまざまな祭儀を行った。そうして復活祭の一週間後、入京してから二十日目に、初めて足利将軍を六条の本国寺に訪ねた。この訪問は和田惟政の斡旋で信長の指図により行われたものであったが、将軍は面会しなかった。このように信長も義昭も神父を引見しないということはキリシタンにとっては相当の打撃であったので、惟政はその面目にかけて信長を動かそうと努めた。