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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

フロイスはこの光景を見て、ソロモン王の「エルサレムの殿堂」の建築や、「ディドのカルタゴ都市建築工事」などを聯想している。

普通ならば四五年はかかるであろうと思われるこの大工事を、信長は七十日間に仕上げた。それはフロイスにとっては非常な驚きであった。彼がここに何か新しい時期の開始を予感したことは、彼の信長に対する熱心な働きかけによっても察することができる。この予感はやがて信長の猛烈な仏教破壊によって充たされるのである。

しかし信長への接近は初めは容易ではなかった。フロイスの入京を聞くと、松永久秀はフロイスに先んじて信長を訪ね、キリシタンの神父のいる所には、必ず擾乱や破壊が起るということを理由にして、その追放を懇願した。それに対して信長は、こういう大きな町でただ一人の人が擾乱の原因になるなどとは、お前の胆は小さい、と答えた、といわれる。しかし、入京の翌々日、フロイスが城へ信長を訪ねて行った時には、信長は会わなかった。その理由は、数千里の遠方から来た外国人にどういう礼儀で接してよいか解らぬということと、密かに面会すれば神父が信長に洗礼を授けに来たなどと心配するものがあるだろうということとであった。