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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

万一、内裏が宣教師追放を決定したならば、その宣教師を高槻にひき取り、自分が京都に出る度毎に同伴して行って一月でも二月でも滞在させる、そういうことを考えていた。しかしそういう風に惟政が宣教師庇護に力を入れることに対しては、山城摂津の武士のなかに不平を抱くものも決して少くはなかった。日乗が眼をつけたのはその点である。彼は信長の信用しそうな有力な武士で惟政を快く思わないものを煽動し、惟政の行政を非難させた。またそういう証言を集めて、巧みに信長に吹き込んだ。そうして遂に惟政に対する信長の信頼の念を突き崩すことに成功したのである。

こうして一五六九年の秋惟政が岐阜に信長を訪ねて行ったとき、信長は惟政を岐阜に入れず、追い返した。そうして高槻のそばの要害芥川城を破壊させた。領地の一部も没収された。惟政は部下二百人と共に剃髪して謹慎の意を表した。日乗たちはこの惟政の失脚を宣教師庇護の罰としてはやし立てたが、惟政の宣教師に対する態度は少しも変らなかった。自分の不幸な運命などは意に介するに足らぬ。宣教師が無事に京都にいることの出来るのが何よりである。もし宣教師が追放されれば、自分はインドまでもついて行く。