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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

信長の反仏教的な態度が根強かったのは、その故であるとも見られよう。

本願寺との長期に亘る関係に比べると、叡山との関係は極めて単純であった。叡山が信長に反抗して浅井朝倉の軍を立て籠らしめた年の翌年の、正月の賀に、細川藤孝が信長を岐阜に訪ねたとき、信長は叡山焼討の意図を洩らしたが、藤孝は、聞かぬ振りをして帰って来たという。王朝文芸に通達した、学者でもあった藤孝にとっては、たとい衆徒の堕落が眼にあまるほどであったとしても、この伝統の聖地を破壊するなどとは思いも及ばぬことであったに相違ない。従ってこの言葉を聞いても、まさか実行するつもりだとは思わなかったのであろう。しかし信長は、「日本で不可能なことと考えられていた」ことを敢て実行するような偶像破壊者であった。一五七一年夏に、浅井の兵が近江に進出したのをきっかけとして、その秋、信長はまた近江に大軍を入れ、浅井の軍を北に圧迫しつつ、三井寺から東坂本まで達したが、その時、信長は突如として、叡山攻撃の命令を発したのである。部下のものも驚愕して諫止しようとしたが、信長の決意は動かなかった。叡山の衆徒だけでは到底信長の軍を防ぎ得るものではない。