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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

彼が有馬に晴信を訪ねて行くと、晴信は非常に彼を款待してキリシタンとなる意志を示した。そこで問題は、出来るだけ国内の紛争を避けつつこの領主を受洗せしめることであった。その内竜造寺の圧迫がひどく加わり、領内の諸城が攻略された。この形勢を見て仏僧さえもキリスト教との提携を説くほどになった。しかし他方にはキリスト教にかこつけて背反を計るものさえあった。ワリニャーニは洗礼を躊躇したが、しかし窮境に立った晴信は遂に心からキリスト教の神に縋る気持になった。こうして一五八〇年の復活祭の頃に、晴信はワリニャーニから洗礼を受け、プロタシヨとなった。親類や家臣大勢が一緒であった。

ワリニャーニは、既に危殆に瀕していた有馬の城に入り、糧食弾薬等を供給して晴信の難を救った。これにはポルトガル船の協力を得たのである。この効果は覿面であった。何人ももう反キリスト教的態度を執り得なかった。晴信は領民にキリシタンとなることを勧め、領内の仏寺、全部で四十余を悉く毀って、キリスト教会堂建築の材料に当てた。こうしてこの後数年の間に全領キリシタンということが実現されて行くのである。

こういう背景のもとにワリニャーニは有馬のセミナリヨを建設したのである。