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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
次の年一五九四年にまたフランシスコ会の宣教師三人が長官の返事をもたらして京都へ来た。返書は秀吉の注文にまるで嵌らないものであったが、しかしこれで宣教師は七人になった。
これらの宣教師が盛んに布教活動を始めたのである。一五九四年の秋には京都に会堂が出来た。翌年には病院が出来た。大坂にも会堂が出来た。長崎にもフランシスコ会士を常駐せしめた。これは四十年来日本の開拓に努力して来たヤソ会士にとっては、まことに不快な出来事と云わなくてはならない。ヤソ会は教皇から日本布教の独占権を与えられているのである。しかもその日本の布教は、目下忍耐を必要とする微妙な境遇に追い込まれている。拙く動くと根本的な失敗を招くであろう。しかるにフランシスコ会士は、ヤソ会と打合せるでもなく、ヤソ会士が潜伏している機会に、大っぴらに日本の布教事業を奪い取ろうとしたのである。ヤソ会士は憤らざるを得なかった。併しフランシスコ会士から見れば、日本のヤソ会士は秀吉の追放令によって悉く国外に逐われた筈である。即ち教皇の許した布教独占権は事実上消滅しているのである。フランシスコ会士はヤソ会士のいない日本へ来て布教を始めたのであるから、抗議を受ける筈はない、この主張は庇理窟というほかないであろうが、しかしまた潜伏戦術の急所を射ぬいたものともいえるであろう