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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
――乱世という雲は、あの折から日本の空を去っているのじゃ、同時に、人心は戦に倦み、その後の戦は、戦をなくするための戦、――真の支配者を定めるための戦にすぎぬ。さるを、殿下の亡き後も、大仏殿の建立を始め、諸事の大工事に、少しも四民の安堵を計られぬため、民は、いつのまにか、徳川内府の政策に耳を傾け、諸侯は、争って、幕下に参じ、でなければ大坂城と、徳川家と、七分三分に帰する所を狡く見ている。その証拠には、内府の一声には、今度の会津攻めでも、即日に七十余侯の大軍が東下しているのみか、家康の一笑一顰をおそれて、先を争ってゆくさまは、むしろ浅ましいものがある。……だが、それが時流じゃ、見くびれぬ時の勢いだ、直江山城は内府を敵と心得て、その時勢を敵としていることに気がつかぬ」
「――だが、刑部」
「なんじゃ」
「山城は、私怨私慾で兵を挙げたのではない――少なくとも、彼の血には、まだ故太閤殿下の」
「いや」
手を振ろうとして、膝からすこし手を持ち上げ、
「治部、そこの見極めは、むずかしいぞ。山城も、さる者」
「人は知らず、この三成は信じる。直江兼継は、豊家を思う人間のひとりに相違ないと。