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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

年ばえはまだようやく二十三、四ぐらい。くるっとした純真な眼を持ち、何処かあどけないところさえある顔立ちだが、その顔にも泥土が刎ね上がっていて、乱れた髪の毛がかかり、総体に鬼気のある姿を、さらに嶮しい身構えに固くして、隼が翼を収めているようにじっと隅へ身を寄せているのだった。

「だ、だれだっ? ……おめえは」

権十は、渇いた声をはげまして、やっといった。

「――人の船へ、断りなしで、そ、そんな泥足のまま。……これでも苫の内は人間の住んでいる世帯だぞ」

すると、姿にも似げなく――その侍は両手をつかえて、

「お宥しください」

素直に、すぐ謝って、

「重々、済まぬこととは心得ていたが、一身の危急、つい前後を顧みている遑もなく、お船の内へ隠れ込んだ。――その上にも、寔に無理なお願いであるが、どうか拙者をこのまま匿って、霞ヶ浦の常陸岸か、鹿島の辺まで便乗させてもらえまいか」

と、重ねていう。

権十は少し安心もし、気も直して、

「それやあどっち途、銚子へ帰る空船だから、乗せて上げまいものでもないが――だが、この関宿には、河筋にも関所の柵があるんですぜ。一体お前さんは、その河番所を通る手形を持っているんですか」