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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

四

「戦じゃぞ。こんどのは、大きい戦らしい。この辺の者も、今のうち、家財を纏めて逃げぬと、逃げはぐれようぞ」

夜半に、村の者は、お互いの戸を叩き合って迫った。

わしは、病人の老母をかかえているし、戦の火など見ると、かえって性根が据わる質なので、

「なあに、大した事あないよ。おっ母さん、俺がついている限り、案じなさんなよ」

枕元へ坐って、母へはそういったが、腰には、野太刀をさし込み、側には古びた手槍一筋寄せて、廂ごしの赤い空を見つめながら、夜明けまで坐っていた。

四

夜明け頃から午頃にかけて、手負いの血まみれ武者や、鎧に焼け焦げのある士だの、担がれたり、槍杖をついたり――何しろ七、八百の兵が、村を通過した。

蝗が通った後みたいに、その日だけで、村の食物は失くなってしまった。もっとも老人や子供や百姓のあらかたは、もう山越えして、何処かへ逃げてしまってはいたが。

「罰あたりめ」

「いかに、御不和な仲とはいえ」

「親と名のついた山城守様を、子の義龍が討って殺すとは」

「極悪人の大将である」

「人倫の賊。天も憎み給うであろう。ああ、浅ましい」

「山城守入道どのの、悪い報いか。