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はいいろのきょじん
灰色の巨人/魔法博士
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《灰色の巨人/魔法博士(はいいろのきょじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 156,085 字 · 312 頁
そのあいだ、だれも身うごきさえしなかったのです。
「ウヘヘヘヘ……。」
怪人が、三日月がたの口を大きくひらいて、機械のような声で笑いました。そして、本棚のガラス戸の並んだまえを、ツーッと、スイッチのある壁の方へ走ったかとおもうと、パチッと、また電灯が消えました。
それと同時でした。
「あっ、やられたっ! 聖書をとられた。はやく、スイッチを!」
山下さんの、とんきょうな叫び声が、暗やみの中にとどろいたのです。
「ウヘヘヘヘ……、どうだ。おどろいたか。さっき盗んだといったのは、きみに金庫をひらかせる手だったのさ。これがおれの魔法だよ。いくらおれでも、扉をひらかないで、金庫の中のものは取りだせないからね。ウヘヘヘヘ……。」
きみの悪い笑い声が、聞こえているあいだは、だれもスイッチに近よる勇気がありません。ただ、じっと、からだをかたくして立ちすくんでいるばかりでした。
怪人はそれっきり、声をたてませんでした。まっ暗で、どこにいるかわかりません。もう逃げだしてしまったのかもしれません。それから一分ほどして、やっと山下さんは、スイッチのところへかけよりました。そしてパッと電灯がついたのです。