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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
線上閱讀福沢 諭吉《福翁自伝(ふくおうじでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 頁
それで私は砲術家の一切の元締になって、何もかも私が一切取扱て居る。その時分の諸藩の西洋家、例えば宇和島藩、五島藩、佐賀藩、水戸藩などの人々が来て、或は出島の和蘭屋敷に行て見たいとか、或は大砲を鋳るから図を見せて呉れとか、そんな世話をするのが山本家の仕事で、その実は皆私が遣る。私は本来素人で、鉄砲を打つのを見た事もないが、図を引くのは訳けはない。颯々と図を引いたり、説明を書いたり、諸藩の人が来れば何に付けても独り罷り出て、丸で十年も砲術を学んで立派に砲術家と見られる位に挨拶をしたり世話をしたりすると云う調子である。処で私を山本の居候に世話をして入れて呉れた人、即ち奥平壹岐だ。壹岐と私とは主客処を易えて、私が主人見たようになったから可笑しい。壹岐は元来漢学者の才子で局量が狭い。小藩でも大家の子だから如何も我儘だ。もう一つは私の目的は原書を読むに在て、蘭学医の家に通うたり和蘭通詞の家に行ったりして一意専心原書を学ぶ。原書と云うものは始めて見たのであるが、五十日、百日とおい/\日を経るに従て、次第に意味が分るようになる。所が奥平壹岐はお坊さん、貴公子だから、緻密な原書などの読める訳けはない。