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ふくおうじでん

福翁自伝

福沢 諭吉

線上閱讀福沢 諭吉《福翁自伝(ふくおうじでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 頁

青空文庫

塾の始末に困る、楽書無用

昔し/\拿破翁の乱に和蘭国の運命は断絶して、本国は申すに及ばず印度地方まで悉く取られて仕舞て、国旗を挙げる場所がなくなった。所が、世界中纔に一箇処を遺した。ソレは即ち日本長崎の出島である。出島は年来和蘭人の居留地で、欧洲兵乱の影響も日本には及ばずして、出島の国旗は常に百尺竿頭に飜々して和蘭王国は曾て滅亡したることなしと、今でも和蘭人が誇て居る。シテ見るとこの慶應義塾は日本の洋学の為めには和蘭の出島と同様、世の中に如何なる騒動があっても変乱があっても未だ曾て洋学の命脈を断やしたことはないぞよ、慶應義塾は一日も休業したことはない、この塾のあらん限り大日本は世界の文明国である、世間に頓着するなと申して、大勢の少年を励ましたことがあります。

塾の始末に困る、楽書無用夫れはそれとして又一方から見れば、塾生の始末には誠に骨が折れました。戦争後意外に人の数は増したが、その人はどんな種類の者かと云うに、去年から出陣してさん/″\奥州地方で戦て漸く除隊になって、国には帰らずに鉄砲を棄てゝその儘塾に来たと云うような少年生が中々多い。中にも土佐の若武者などは長い朱鞘の大小を挟して、鉄砲こそ持たないが今にも斬て掛ろうと云うような恐ろしい顔色をして居る。