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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
線上閱讀福沢 諭吉《福翁自伝(ふくおうじでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 頁
和田与四郎壮士を挑む
大馬鹿であるから、武家の刀は之を名けて馬鹿メートルと云うが好かろうなどゝ放言して居れば、塾中にも自から同志がある。
和田与四郎壮士を挑む明治四年、新銭座から今の三田に移転した当分の事と思う、或日和田義郎(今は故人になりました)と云う人が、思切た戯をして壮士を驚かしたことがある。この人は後に慶應義塾幼椎舎の舎長として性質極めて温和、大勢の幼稚生を実子のように優しく取扱い、生徒も亦舎長夫婦を実の父母のように思うと云う程の人物であるが、本来は和歌山藩の士族で、少年の時から武芸に志して体格も屈強、殊に柔術は最も得意で、所謂怖いものなしと云う武士であるが、一夕例の丸腰で二、三人連れ、芝の松本町を散歩して行くと、向うから大勢の壮士が長い大小を横たえて大道狭しと遣て来る。スルと和田が小便をしながら往来の真中を歩いて行く。サアこの小便を避けて左右に道を開くか、何か咎め立てして喰て掛るか、爰が喧嘩の間一髪、いよ/\掛て来れば五人でも十人でも投り出して殺して仕舞うと云う意気込が、先方の若武者共に分たか、何にも云わずに避けて通たと云う。大道で小便とは今から考えれば随分乱暴であるが、乱世の時代には何でもない、こんな乱暴が却て塾の独立を保つ為めになりました。