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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
線上閱讀福沢 諭吉《福翁自伝(ふくおうじでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 頁
馬関より乗船
じゃ、彼れが船頭なら宜いが実は百姓です。この節暇なものですから内職にそんな事をします。百姓が農業の間に慣れぬ事をするから、少し浪風があると毎度大きな間違いを仕出来しますと云うのを聞て、実に怖かった。成程奴等が一生懸命になって私に加勢を頼んだのも道理だと思いました。
馬関より乗船夫れから船場屋寿久右衛門の処から乗た船には、三月の事で皆上方見物、夫れは/\種々様々な奴が乗て居る。間抜けな若旦那も乗て居れば、頭の禿た老爺も乗て居る、上方辺の茶屋女も居れば、下ノ関の安女郎も居る。坊主も、百姓も、有らん限りの動物が揃うて、其奴等が狭い船の中で、酒を飲み、博奕をする。下らぬ事に大きな声をして、聞かれぬ話をして、面白そうにしてる中に、私一人は真実無言、丸で取付端がない。船は安芸の宮島へ着た。私は宮島に用はない。唯来たから唯島を見に上る。外の連中はお互に朋友だから宜いだろう。皆酒を飲む。私も飲みたくて堪らぬけれども、金がないから只宮島を見たばかりで、船に帰て来てむしゃ/\船の飯を喰てるから、船頭もこんな客は忌やだろう、妙な顔をして私を睨んで居たのは今でも覚えて居る。