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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
線上閱讀福沢 諭吉《福翁自伝(ふくおうじでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 頁
反故を踏みお札を踏む
拾うように取れる虱を取ては庭石の上に置き、マサカ爪で潰すことは出来ぬから、私を側に置いて、この石の上のを石で潰せと申して、私は小さい手ごろな石を以て構えて居る。母が一疋取て台石の上に置くと私はコツリと打潰すと云う役目で、五十も百も先ずその時に取れる丈け取て仕舞い、ソレカラ母も私も着物を払うて糠で手を洗うて、乞食には虱を取らせて呉れた褒美に飯を遣ると云う極りで、是れは母の楽みでしたろうが、私は穢なくて穢なくて堪らぬ。今思出しても胸が悪いようです。
反故を踏みお札を踏む又私の十二、三歳の頃と思う。兄が何か反古を揃えて居る処を、私がドタバタ踏んで通った所が兄が大喝一声、コリャ待てと酷く叱り付けて、「お前は眼が見えぬか、之を見なさい、何と書いてある、奥平大膳大夫と御名があるではないかと大造な権幕だから、「アヽ左様で御在ましたか、私は知らなんだと云うと、「知らんと云ても眼があれば見える筈じゃ、御名を足で踏むとは如何云う心得である、臣子の道はと、何か六かしい事を並べて厳しく叱るから謝らずには居られぬ。「私が誠に悪う御在ましたから堪忍して下さいと御辞儀をして謝ったけれども、心の中では謝りも何もせぬ。