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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
線上閱讀福沢 諭吉《福翁自伝(ふくおうじでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 頁
官賊の間に偏せず党せず
大中小の辞書、地理書、歴史等は勿論、その外法律書、経済書、数学書などもその時殆めて日本に輸入して、塾の何十人と云う生徒に銘々その版本を持たして立派に修業の出来るようにしたのは、実に無上の便利でした。ソコデその当分十年余も亜米利加出版の学校読本が日本国中に行われて居たのも、畢竟私が始めて持て帰たのが因縁になったことです。その次第は生徒が始めて塾で学ぶ、その学んで卒業した者が方々に出て教師になる、教師になれば自分が今まで学んだものをその学校に用るのも自然の順序であるから、日本国中に慶應義塾に用いた原書が流布して広く行われたと云うのも、事の順序はよく分て居ます。
官賊の間に偏せず党せずそれで先ず官軍は存外柔かなものであって、何も心配はない。併し政治上の事は極めて鋭敏なもので、嫌疑と云うことがあっては是れは容易ならぬ訳けであるから、ソレを明にする為めに、私は一切万事何も斯も打明けて、一口に云えば塾も住居も殻明きにして仕舞い、何処を捜した所で鉄砲は勿論一挺もなし、刃物もなければ飛道具もない、一目明白、直に分るようにしました。始終爾う云う身構えにして居るから、私の処には官軍方の人も颯々と来れば、賊軍の人も颯々と出入りして居て、私は官でも賊でも一切構わぬ、何方に向ても依怙贔屓なしに扱て居るから、双方共に朋友でした。