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ふくおうじでん

福翁自伝

福沢 諭吉

線上閱讀福沢 諭吉《福翁自伝(ふくおうじでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 頁

青空文庫

諫早にて鉄屋と別る

その時を見計ろうて中村(諭吉、当時は中村の姓を冒す)は初めから中津に帰る気はなかった、江戸に行くと云て長崎を出たと、奥平にも話して呉れ。是れも聊か面当だと互に笑て、朋友と内々の打合せは出来た。

諫早にて鉄屋と別るそれから奥平の伝言や何かをすっかり手紙に認めて仕舞い、是れは例の御隠居様に遣らなければならぬ。「私は長崎を出立して中津に帰る所存で諫早まで参りました処が、その途中で不図江戸に行きたくなりましたから、是れから江戸に参ります。就ては壹岐様から斯様々々の御伝言で、お手紙は是れですからお届け申すと丁寧に認めて遣って、ソレカラ封をせずに渡した即ち大橋六助に宛た手紙を本人に届ける為めに、私が手紙を書添えて、「この通りに封をせぬのは可笑しい、こんな馬鹿な事はないがこの儘御届け申します。原はと云えば自分の方で呼還すように企てゝ置きながら、表べに人を欺くと云うのは卑劣至極な奴だ。私はもう中津に帰らず江戸に行くからこの手紙を御覧下さいと云うような塩梅に認めて、万事の用意は出来て、鉄屋惣兵衛と一処に長崎を出立して諫早まで――この間は七里ある――来た。丁度夕方着たが何でも三月の中旬、月の明るい晩であった。