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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
線上閱讀福沢 諭吉《福翁自伝(ふくおうじでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 頁
又何と軽蔑されても決して怒らない。どんな事があっても怒った事はない。矧や朋輩同士で喧嘩をしたと云うことは只の一度もない。ツイゾ人と掴合ったの、打ったの、打たれたのと云うことは一寸ともない。是れは少年の時ばかりでない。少年の時分から老年の今日に至るまで、私の手は怒に乗じて人の身体に触れたことはない。所が先年二十何年前、塾の書生に何とも仕方のない放蕩者があって、私が多年衣食を授けて世話をして遣るにも拘わらず、再三再四の不埓、或るときそのものが何処に何をしたか夜中酒に酔て生意気な風をして帰て来たゆえ、貴様は今夜寝ることはならぬ、起きてチャント正座して居ろと申渡して置て、少して行て見ればグウ/″\鼾をして居る。この不埓者めと云て、その肩の処をつらまえて引起して、目の醒めてるのを尚おグン/″\ゆたぶって遣たことがある。その時跡で独り考えて、「コリャ悪い事をした、乃公は生涯、人に向て此方から腕力を仕掛けたようなことはなかったに、今夜は気に済まぬ事をしたと思て、何だか坊主が戒律でも破たような心地がして、今に忘れることが出来ません。その癖私は少年の時から能く饒舌り、人並よりか口数の多い程に饒舌って、爾うして何でも為ることは甲斐々々しく遣て、決して人に負けないけれども、書生流儀の議論と云うことをしない。