Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
」兄さんは、すまして言う。
「芹川も、いつのまにやら図々しくなってしまいやがった。この図々しさが、作品にも、少し出るといいんだがねえ。」
兄さんは、急にしょげた。
「僕も十年計画で、やり直すつもりです。」
「一生だ。一生の修業だよ。このごろ作品を書いているかね?」
「はあ、どうもむずかしくて。」
「書いていないようだね。」津田さんは溜息をついた。「君は、日常生活のプライドにこだわりすぎていけない。」
冗談を言い合っていても、作品の話になると、流石にきびしい雰囲気が四辺に感ぜられた。本当に佳い師弟だと思った。紹介状を書いていただいて、おいとまする時、津田さんが、玄関まで見送って来られて、
「四十になっても五十になっても、くるしさに増減は無いね。」とひとりごとのように呟いた言葉が、どきんと胸にこたえた。
作家も、津田さんくらいになると、やっぱり違ったところがあると思った。
本郷の街を歩きながら、兄さんは、
「どうも本郷は憂鬱だね。僕みたいに、帝大を中途でよした者には、この大学の建物は恐怖の的だ。何だかこっちが、卑屈になってやり切れない。犯罪者みたいな気がして来るんだ。