Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
5
竹さんの結婚も、遠い昔の事のように思われて、すっとからだが軽くなった。あきらめるとか何とか、そんな意志的なものではなくて、眼前の風景がみるみる遠のいて望遠鏡をさかさに覗いたみたいに小さくなってしまった感じであった。胸中に何のこだわるところもなくなった。これでもう僕も、完成せられたという爽快な満足感だけが残った。
5
晩秋の澄んだ青空をアメリカの飛行機が旋回している。僕たちは、その三好野ふうの家の前に立ってそれを見上げて、
「つまらなそうに飛んでいるねえ。」
「ええ。」とマア坊は微笑む。
「しかし、飛行機というものの形には、新しい美しさがある。むだな飾りが一つも無いからだろうか。」
「そうねえ。」とマア坊は小声で言って、子供のように無心に空の飛行機を見送っている。
「むだな飾りの無い姿って、いいものなんだねえ。」
それは、飛行機だけでなく、マア坊の放心状態みたいな素直な姿態に就いてのひそかな感懐でもあったのだ。
二人だまって歩いて、僕は、途で逢う女のひとの顔をいちいち注意して見て、程度の差はあるが、いまの女のひとの顔には皆一様に、マア坊みたいな無慾な、透明の美しさがあらわれているように思われた。