Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

パンドラのはこ

パンドラの匣

太宰 治

Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme

Aozora Bunko

6

なあんだ、僕はいまうとうと眠って夢を見たのだ。お母さんが来たのも夢、マア坊があの三好野みたいな家で泣いたのも夢、と一瞬そんな気がして嬉しかったが、しかし、そうではなかった。

「いい久留米絣やな。」竹さんは僕に着物を脱がせて、「ひばりには、とてもよく似合うわよ。マア坊は果報やなあ。帰りに一緒にオバさんとこでお茶を飲んだってな。」

やはり、夢ではなかった。

「竹さん、おめでとう。」と僕が言った。

竹さんは返辞をしなかった。黙って、うしろから寝巻をかけてくれて、それから、寝巻の袖口から手を入れて、僕の腕の附け根のところを、ぎゅっとかなり強く抓った。僕は歯を食いしばって痛さを堪えた。

6

何事も無かったように寝巻に着換えて、僕は食事に取りかかり、竹さんは傍で僕の絣の着物を畳んでいる。お互いに一ことも、ものを言わなかった。しばらくして竹さんが、極めて小さい声で、

「かんにんね。」と囁いた。

その一言に、竹さんの、いっさいの思いがこめられてあるような気がした。

「ひどいやつや。」と僕は、食事をしながら竹さんの言葉の訛りを真似てそっと呟いた。

そうしてこの一言にも、僕のいっさいの思いがこもっているような気がした。