Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
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」
僕は自分の首のところに手をやって、結ぶ真似をして、ネクタイか? という意味の無言の質問をすると、
「ううん。」と下唇を突き出して笑って否定し、「ばかねえ。」と小声で言った。
実際、ばかだ。僕には、背広さえ無いのに、何だってまた、ネクタイなんて妙なものを考えたのだろう。われながら、おかしい。或いは、あの小さい懐中鏡から無意識にネクタイを聯想したのかも知れない。
5
僕は、こんどは右手で、ものを書く真似をして、万年筆か? という意味の質問をしてみた。実に僕は勝手な男だ。僕の万年筆がこの頃はどうも具合が悪いので、あたらしいのが欲しいという意識が潜在していたらしく、ついこんな時ひょいと出る。僕は内心、自分の図々しさに呆れたよ。
「ううん。」マア坊は、やっぱり首を横に振って否定する。まるでもう、見当がつかない。
「ちょっと、地味かも知れないけど、人にやったりしないでね。お店に、たった一つ残っていたのよ。飾りも、ちっとも上等でないけど、ここを出てから持って歩いてね。ひばりは紳士だから、きっと要るわよ。」
いよいよ、わからなくなった。まさか、ステッキじゃあるまい。