Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
人間のみじめさ、自分の醜さに絶望せず、「凡て汝の手に堪うる事は力をつくしてこれを為せ。」
努めなければならぬ。十字架から、のがれようとしているのではない。自分の醜いしっぽをごまかさず、これを引きずって、歩一歩よろめきながら坂路をのぼるのだ。この坂路の果にあるものは、十字架か、天国か、それは知らない。かならず十字架ときめてしまうのは、神を知らぬ人の言葉だ。ただ、「御意のままになし給え。」
たいへんな決意で、芝の斎藤氏邸に出かけて行ったが、どうも斎藤氏邸は苦手だ。門をくぐらぬさきから、妙な威圧を感ずる。ダビデの砦はかくもあろうか、と思わせる。
ベルを押す。出て来たのはれいの女性だ。やはり、兄さんの推定どおり、秘書兼女中とでもいったところらしい。
「おや、いらっしゃい。」相変らず、なれなれしい。僕を、なめ切っている。
「先生は?」こんな女には用は無い。僕は、にこりともせずに尋ねた。
「いらっしゃいますわよ。」たしなみの無い口調である。
「重大な要件で、お目に、――」と言いかけたら、女は噴き出し、両手で口を押えて、顔を真赤にして笑いむせんだ。僕は不愉快でたまらなかった。