Japanische Klassiker mit Furigana
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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Lesen Sie 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.479 Zeichen · 394 Bildschirme
という声が突っ走った。同時に一つの黒い影、もろにうしろへ飛びしさったがヒューッと何か投げつけた。と、もうその時にはその人影、河とは反対、耕地の方へ投げられた石のように走っていた。眼にもとまらぬ早業で、しかも綽々たる余裕がなければ、到底出来ない芸当である。
と、初めて、「待て!」という声が広太郎の口からほとばしった。時のハズミで出た声で、真に呼び止めた声ではない。その証拠には追おうともしない。追わないばかりかグタグタと、大地へ坐ってあぐらをかいた。ホーッともらす太い息、と、ガチャンと刀を捨てて、ピッタリ両手を突いたものである。
「天下は広大。えらい奴がいるなあ」まずもらしたものである。「柳生の極意甲割り、死に物狂いで下ろした太刀が、幸いきまって敵の刀をつばのきわから、折ったればこそ、運よく命は助かったものの、そうでなかったらやられたところだ。……うむ」といって考え込んだ。「どうもわからない、何者だろう?」またそこで考えこんだ。「剣道名誉の武士にしては、少しく態度が無頼に過ぎる。といって市井の無頼漢にしては、余りに腕が利いている。……胆の据え方、機のつかみ方、とてもとても常人ではない。