Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
三十九
「あなたが奮発してお出掛になるということは、大分皆を動したようです」
この記者の言葉を聞くと、岸本には返事のしようが無かった。地べたを見つめたままで、しばらく黙って歩いた。
「あなたのお子さん達はどうするんです」とまた記者が訊いた。
「子供ですか。留守は兄貴の家の人達に頼んで行くつもりです。姉が郷里から出て来てくれることに成っていますからね」
「姉さんは最早出ていらしったんですか」
「いえ、まだ……来月でなきゃ」
「あなたは今月のうちに神戸へお立ちに成るというじゃ有りませんか。姉さんもまだ出ていらっしゃらないのに――」
記者が心配して言ってくれたことは岸本の身に徹えた。とても彼は嫂に、節子の母親に合せて行く顔が無かった。
三十九
長旅に耐えられるような鞄をひろげて書籍や衣服なぞを取纏め、いささかの薬の用意をも忘れまいとする頃は、遠い国に向おうとする心持が実際に岸本に起って来た。
「泉ちゃんや繁ちゃんも、これからは味方になるものが無くて可哀そうですね」
根岸の姪も高輪へ訪ねて来て、そんなことを岸本に言った。
「お前達はそんな風に思うかね。叔父さんはまだ小学校へ通う時分から、鈴木の兄さんの家に一年、それから田辺さんの家にずっと長いこと書生をしていたが、別にそんな風に考えないでも済んだ。