Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんせい

新生

島崎 藤村

Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme

Aozora Bunko

六十一

それは節子が日頃大切にして彼女の肌身につけていた半襟だ。岸本は枝折代りに書籍の中に挾んで置いたその女らしい贈物をも納ってしまった。彼は四五日の留守と子供等の世話とを祖母さんや久米に頼んで置いて、ぶらりと高輪の家を出た。

六十一

岸本の足は谷中の方へ向いた。彼には義雄の家で用向のために待受ける約束の人があり、保養らしい保養もしないでいるあの兄を誘って磯部あたりまで行って見たいという心があった。彼にはまた、久しぶりで山地に近い温泉場まで行き、榛名妙義の山岳を汽車の窓から望み、山気に包まれた高原や深い谿谷に接するという楽みがあった。あの塩分の強い濁った礦泉の中に浸りながら、碓氷川の流れる音でも聞いて、遠い旅から疲れて帰って来た身も心をも休めたいという楽みがあった。

義雄が住む家を見に行くのは、岸本に取ってそれが二度目の時であった。上野から先はまだ池の端を廻る電車の出来ていない頃で、岸本は冬枯の公園側の道を義雄の家の方へ歩いて行った。節子が谷中から高輪へ通って来るのもこの道だ。そんなことが不忍の池の畔を歩いて行く彼の心を楽しくした。

別に岸本は、谷中の家に節子を見るということから起って来る彼自身だけの特別な心持を有っていた。