Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
五十三
寺院の番人に案内されて、更に奥深く行って見た。彩硝子の窓から射し入る静かな日の光は羅馬旧教風な聖母マリアの金色の像と、その辺に置いてある古めかしく物錆びた風琴などを照して見せた。その番人も仏蘭西人だ。そこはもう岸本に取って全く知らない人達の中であった。
あわただしい旅の心持の中でも、香港から故国の方へ残して置いて来た手紙のことは一日も岸本の心に掛らない日は無かった。その晩の夜行汽車で、彼は絹商と一緒に巴里へ向けて発った。
五十三
遠く目ざして行った巴里に岸本が入ったのは、船から上って四日目の朝であった。彼は巴里までの途中で同行の絹商と一緒に一日をリヨンに送って行った。ガール・ド・リヨンとは初て彼が巴里に着いた時の高い時計台のある停車場であった。そこで彼は倫敦行の絹商に別れ、辻馬車を雇って旅の荷物と一緒に乗った。晴雨兼帯とも言いたい馬丁の冠った高帽子まで彼にはめずらしい物であった。彼は右を見、左を見して、初めてセエヌ河を渡った。まだ町々の響も喧しくない五月下旬の朝のうちのことで、マルセエユやリヨンで見て行ったと同じプラタアヌの並木が両側にやわらかい若葉を着けた街路の中を乗って行った時は、馬丁の鳴らす鞭の音や石道を踏んで行く馬の蹄の音まで彼の耳に快よく聞えた。