Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
三十二
出来ることなら人にも知らせずに行こう。日頃親しい人達にのみ別れを告げて行こう。すくなくも苦を負い、難を負うことによって、一切の自己の不徳を償おう、とこう考えた。それにしても、いずれ一度は節子のことを兄の義雄だけには頼んで置いて行かねば成らなかった。それを考えると、岸本は地べたへ顔を埋めてもまだ足りないような思いをした。
三十二
春の近づいたことを知らせるような溶け易い雪が来て早や町を埋めた。実に無造作に岸本は旅を思い立ったのであるが、実際にその支度に取掛って見ると、遠い国に向おうとする途中で必要なものを調えるだけにも可成な日数を要した。
眼に見えない小さな生命の芽は、その間にそろそろ頭を持上げ始めた。節子の苦しみと悩みとは、それを包もう包もうとしているらしい彼女の羞を帯びた容子は、一つとして彼女の内部から押出して来る恐ろしい力を語っていないものはなかった。あだかも堅い地を割って日のめを見ないでは止まない春先の筍のような勢で。それを見せつけられる度に、岸本は注文して置いた旅の衣服や旅の鞄の出来て来るのを待遠しく思った。
ある日、岸本は警察署に呼出されて身元調を受けて帰って来た。