Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
六十五
それを思うと岸本は恐ろしくなってその写真を抽筐の底に隠した。
六十五
山羊の乳売の笛で岸本は自分の部屋に眼を覚ました。巴里のような大きな都会の空気の中にもそうした牧歌的なメロディの流れているかと思われるような笛の音がまだ朝の中の硝子窓に伝わって来た。旅らしい心持で、その細い清んだ音に耳を澄ましながら、岸本は窓に向いた机のところで小さな朝飯の盆に対った。それを済ました時分に、女中が来てコンコンと軽く部屋の戸を叩く音をさせた。何時でも西伯利亜経由とした郵便物の来るのは朝の配達と極っていた。その時彼は新聞や雑誌や手紙の集まったのをドカリと一時に受取った。待たれた故国からの便りの中には、節子の手紙も混っていた。
「ホウ、泉ちゃんが御清書を送ってよこした」
と岸本は言って見て、外国に居て見ればめずらしいほど大きく書いた子供の文字を展げて見た。それから節子の手紙を読んだ。何と言ってよこしても直接には答えないで黙っている叔父に宛てて、彼女は根気好くも書いてよこした。叔父さんの旅の便りが新聞に出る度に、自分はそれを読むのをこの上もない心の慰めとしていると書いてよこした。